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傾福さん
| 放送年 | 2017年 |
|---|---|
| 話数 | 1話 |
| 原作 | オリジナル |
前の2部作を統合し、エピローグとして追加映像を加えた『啓福さん』は、鉄道車掌の制服を着た少女と浮遊するマンタエイが異世界空間を冒険する物語です。タツキによる演出、ヒラヤスによるアニメーション、ユッコによる美術(いずれもアニメーションスタジオirodoriのメンバー)、そして花守ゆみりの声優出演が特徴です。
作品概要・あらすじ
あらすじ
鉄道車掌の制服を身にまとった少女と、空中を漂うマンタエイが、幻想的な異世界空間をともに旅する短編アニメ。前後編2部作として公開された作品を統合し、新たなエピローグ映像を加えた完全版です。言葉を超えた映像表現で、ふたつの存在が異空間をめぐる静かな冒険を描きます。
みどころ・魅力
① irodoriが生み出す手作り感あふれる独創的な映像美
アニメーションスタジオirodoriのメンバーが演出・アニメーション・美術をすべて手がけており、少人数ならではの統一感と実験性が光ります。CGに頼らない手書きの質感と独特の色彩設計が、ほかにはない独自の世界観を作り上げています。
② セリフなしで語る、詩情あふれる異世界冒険
物語は説明台詞を排し、映像と音だけで少女とマンタエイの関係性と旅の空気感を伝えます。観る者の解釈に委ねられた余白が多く、短編ながら深い印象を残す、映像詩のような体験が楽しめます。
③ 花守ゆみりの声が彩る、繊細な感情表現
声優・花守ゆみりが出演しており、セリフの少ない作品においても声の存在感が物語に奥行きを与えています。静かな異世界の空気に溶け込む繊細な演技が、作品全体のトーンを丁寧に引き立てています。
キャスト・声優一覧


スタッフ
| 監督 | たつき |
|---|---|
| 美術監督 | 白水優子 |
| 音響監督 | 都築寿文 |
感想・評価
最初に見たとき——第一印象と、見ることになったわけ
「傾福さん」というタイトルを見たとき、正直なんとも言えない引力があった。意味がわかりそうでわからない、固有名詞なのか状態なのかも判然としないこの名前。制作がirodoriだと知って、それならまあ、と再生ボタンを押した。
最初に画面に映ったのは、鉄道車掌の制服を着た少女と、空中に浮かぶマンタ。このふたつの取り合わせが、妙に「正しい」感じがした。奇妙なのに違和感がない。タツキ演出の空気がすでにここに全部入っている。
2回目に見たとき、最初は見えていなかった背景の細部に気づいた。ヒラヤスのアニメーションの動き方、ユッコの美術が作り出す「どこでもない場所」の質感。短い作品なのに、何回見ても発見がある構造になっている。
「どこでもない場所」を一緒に漂うこと、それだけが目的の旅
この作品には、ストーリーという意味での起承転結がほぼない。少女とマンタが異世界の空間を移動し、何かを体験し、また進む。それだけだ。
でもそれが「欠陥」ではなく「設計」だということは、見ているとすぐにわかる。傾福さんが描こうとしているのは、目的地ではなく移動の感触そのものだ。旅において「どこへ向かうか」より「誰と移動するか」の方が体験の質を決めることがある——この作品はそこだけを丁寧に掘り下げている。
鉄道車掌という記号は興味深い。車掌は乗客を案内する側だが、この少女が案内しているのかマンタに連れて行かれているのかが終始あいまいだ。主導権の所在が曖昧なまま進む関係性、というのはirodori作品全般に通底するテーマでもある。ケモノフレンズのかばんちゃんとサーバルの関係もそうだった——どちらが守っているのかわからない状態で、互いの存在が成立している。
花守ゆみりの声が、この曖昧さをうまく支えている。はっきりした感情を主張しすぎず、かといって無機質でもない。少女がこの空間に「いる」ことの自然さを、声だけで納得させてくる。声優の仕事として、これはかなり繊細な匙加減だと思う。
ONA(配信オリジナル)という形式も、この作品には合っていた。TVシリーズのような視聴文脈を持たず、好きなタイミングで単独で見られる。「乗り物」の話なのに、視聴者側もまた好きなタイミングで「乗って」「降りられる」作品になっている。
特に刺さったシーン
マンタが初めて画面の奥から手前へ向かってくるカット。あの動きの設計が好きで、何度も止めて見た。生物的な揺らぎがありながら、どこか機械的な規則性もある。ヒラヤスのアニメーションの癖がそのまま出ている動き方で、「どこの流儀でもない動き」というのが見ていてじんわりくる。
花守ゆみりのセリフ回しで印象に残っているのは、感情的なピークではなく、何でもない短い一言のほう。力を抜いたところに彼女の演技の本領がある。特にマンタに話しかける場面、相手が言葉を返さないことが前提の声のトーンというのは、普通の掛け合いとは別の技術が要る。それをさらりとやっているのが、124本のキャリアの積み重ねだと思う。
終盤の移動シーンで、背景の光の処理が変わる瞬間がある。ユッコの美術が一段階トーンを落とすあの瞬間に、作品の空気が静かに変わる。セリフでも演技でもなく、絵の判断だけで感情を動かしてくる。それができるのが、小規模スタジオで全員が全体を把握して作っているirodoriの強みだ。
読んで見たくなったら——サブスク配信はなし。Amazonで購入できる。
この作品が刺さる人・合わない人
刺さる人
- タツキ・irodori作品を追っているファン
- 短編アニメーションや実験的な映像作品が好きな人
- 「意味より雰囲気」で映像を楽しめる人
- 花守ゆみりの演技を別軸で追いかけている人
- 音楽・美術・アニメーションが統合された体験として映像を見る人
合わない人
- ストーリーや起承転結を求めて見る人
- キャラクターの感情変化や成長を軸に楽しみたい人
- 30分以上の尺がないと「見た気がしない」人
- 配信で気軽に見たい人(現状Amazon DVD購入のみ)
次に見るなら
「どこでもない場所」を漂う感覚が好きなら、少女終末旅行は外せない。こちらは6話ぶんの尺があり、語られる言葉も多いが、「目的地より移動の感触」という軸は傾福さんと同じところにある。チトとユーリの関係性の静かさが、少女とマンタの関係性と響き合う。
irodoriの文脈を追うならケムリクサ。タツキが長編でやれることを全部詰め込んだ作品で、傾福さんで感じた「設計の密度」の源泉がここにある。短編から長編への橋渡しとして見ると、発見が多い。
映像体験として近いものを求めるならフリクリ(FLCL)。制作もジャンルも全然違うが、「意味を追うより感触に乗る」視聴スタンスが求められる点で通じている。傾福さんで「わからないけど引っかかる」と感じた人が次に行く先として、間違いではないと思う。
配信・視聴情報
| サービス | 配信 | 月額 | 無料期間 | 作品数 |
|---|---|---|---|---|
| ABEMAプレミアムイチオシ | × | ¥680〜(税込) | 無料あり | 1,000+ |
| Amazonプライムビデオ | — | ¥600(税込) | 30日間 | 1,700+ |
| クランクイン!ビデオ穴場 | × | ¥990〜(税込) | 最大1ヶ月 | 7,000+ |
| dアニメストア | × | ¥660(税込) | 31日間 | 7,200+ |
| U-NEXT | × | ¥2,189(税込) | 31日間 | 6,000+ |
| DMM TV | × | ¥550(税込) | 14日間 | 6,300+ |
| Netflix | — | ¥890〜(税込) | なし | 1,600+ |
| Hulu | — | ¥1,026(税込) | なし | 2,900+ |
| Disney+ | — | ¥1,250〜(税込) | なし | 500+ |
『傾福さん』は現在、定額制の配信サービスでの取り扱いは確認されていません。YouTubeなどの無料動画プラットフォームでの公開状況を合わせてご確認いただくことをおすすめします。アニメーションスタジオirodoriの独創的な映像世界を体験できる貴重な短編作品です。
よくある質問
まとめ
『傾福さん』は現在、定額制の配信サービスでの取り扱いは確認されていません。YouTubeなどの無料動画プラットフォームでの公開状況を合わせてご確認いただくことをおすすめします。アニメーションスタジオirodoriの独創的な映像世界を体験できる貴重な短編作品です。
