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この世界の(さらにいくつもの)片隅に
| 放送年 | 2019年 |
|---|---|
| フォーマット | 劇場版 |
| 話数 | 1話 |
| 原作 | 漫画 |
| 制作 | MAPPA |
1930年代半ばの広島郊外で暮らす少女スズは、静かで平凡だが少し不器用で物思いにふける性格。鉛筆でスケッチを描くことが好きで、その才能に秀でている。1943年、両親の取り決めで18歳のスズは、海軍基地がある隣町クレに住む青年に嫁ぎ、彼は軍の文民職で働いている。
作品概要・あらすじ
あらすじ
1930年代半ば、広島郊外の江波で育った少女・北條すずは、絵を描くことが好きな、おっとりとした性格の持ち主。1943年、18歳になったすずは、海軍基地の町・呉に住む北條周作のもとへ嫁ぐ。慣れない土地での新生活、食料難、そして空襲が激しくなる中でも、すずは家族のために知恵を絞り、日々の暮らしをひたむきに守り続ける。2016年公開の前作から新たなエピソードを加えた本作は、戦時下を生きた無名の人々の記憶と、日常の中に宿る温かさを丁寧に描き出す。みどころ・魅力
① 前作から大幅増量された「リン」との物語
2016年版では描かれなかった遊郭の女性・白木リンとすずの関係が、本作の最大の追加要素。すずの夫・周作とリンの過去が丁寧に描かれ、物語に新たな奥行きと切なさをもたらす。前作を観た人も「初めて観る作品」として楽しめる濃密な内容になっている。② 原恵一監督×片渕須直監督のリアルな戦時下の日常描写
食料の配給、代用食のレシピ、防空壕の構造まで徹底的に考証された生活描写が本作の骨格を成す。すずが料理や縫い物に向き合う何気ない場面が、戦時という極限状況の中でこそ輝きを放つ。細部まで作り込まれた背景美術も必見。③ のん(能年玲奈)の声演技と詩情あふれる映像表現
主人公すずを演じるのんの声は、ぼんやりとした温かさとたくましさを見事に両立させている。すずが描く絵が映像として動き出す独創的な演出や、水彩画のような色調の映像美も作品の大きな魅力。観るたびに新たな発見がある、繰り返し鑑賞に耐える作品。キャスト・声優一覧


















スタッフ
| 監督 | 片渕須直 |
|---|---|
| キャラクターデザイン | 松原秀典 |
| 音楽 | コトリンゴ |
感想・評価
最初に見たとき——第一印象と、見ることになったわけ
2016年版を劇場で見たのは、たまたま空き時間ができた平日の午後だった。タイトルで損してると思っていた。「この世界の片隅に」って、詩的すぎてピンとこない。でもエンドロールが終わっても席を立てなくて、隣にいた知らない人がハンカチ使ってるのを横目で見ながら、自分もそうだったので目を合わせられなかった。
「さらにいくつもの片隅に」は、その完全版にあたる。2019年公開、約40分の追加シーンを含む再構成版だ。前作で泣いた記憶があるから、また泣くとは思っていた。思っていたけど、泣き方が違った。前作の「喪失の映画」という印象が、完全版では「もっと複雑な何かの映画」に変わった気がした。追加された人物たちが、スズという女性の像に奥行きを加えている。同じ話のはずなのに、別の映画になっている。
「普通に生きること」が、戦時中では抵抗だった
この映画をいわゆる「反戦映画」として見ると、たぶん的を外す。空襲も出てくるし、原爆投下後の描写もある。でもこの作品が本当に描いているのは、それらに対するスズの態度だ——彼女はドラマチックに嘆かない。茫洋としていて、うっかりしていて、それでも毎日ご飯を作り、配給の食材でなんとかしようと知恵を絞る。
1943年に北條家に嫁いできたスズが積み上げていく日常。ヤミ市での食材探し、すり切れた衣類のやりくり、夫の弁当箱。細谷佳正が声を当てる夫・周作の、言葉少なで不器用な愛情表現。あの控えめな演技が、かえって夫婦の距離感をリアルに感じさせる。言いたいことを全部言わない人間の声の出し方というのが、ああいうふうになるんだなと思った。
完全版で加わる浦野すみ(潘めぐみ)の存在は、スズの生きた世界の「別の側面」を照らす。潘めぐみの声には、抑えた感情の奥にある熱さがある。セリフの数が多くなくても、その場にいる重みが違う。スズと彼女が交差する場面は、前作にはなかったもうひとつの人間関係の軸で、「片隅」がまた別の意味を帯びてくる。
水原哲を演じる小野大輔は、スズの過去と現在をつなぐ役どころだ。小野大輔の声の特徴である「揺らぎを抑えた誠実さ」が、あの役にはまっている。感情を押し殺した人間の台詞回しを、ちゃんと感情として届けてくる。
この映画が描いているのは「普通に生きることへの意志」だと思う。戦争はスズの日常を削っていくけれど、彼女はその都度、残ったものでまた日常を作ろうとする。それはドラマとしての派手さはないが、見ているうちに「これが人間の強さの話だ」とわかってくる。抵抗というのは拳を振り上げることだけじゃない、という映画だ。
特に刺さったシーン
終盤、スズが激しく泣く場面がある。あれは正直、初回では受け止めきれなかった。こうの史代の原作で読んでいても、アニメーションで見ると別物だった。スズの声(のん)が、感情をまんべんなく出すんじゃなくて、どこかひとつの栓が抜けたような泣き方をするのが、ずっと頭に残っている。
完全版で刺さったのは、もう少し静かなシーンだ。すみとスズが短くやりとりする場面の、潘めぐみの声の質感。台詞そのものは短くて素っ気なくて、でもその間の取り方に、言葉にならないものがたくさん詰まっている。「声優ってこういう演技で泣かせにくるんだ」と改めて思った。
あとは細谷佳正演じる周作が、日常のなかでスズに向ける小さな気遣いの場面。セリフが少ないぶん、声の温度だけで全部伝えてくる。あのシーン、映画館の音響で聞くのと配信で聞くのとでは印象がかなり違うと思う。劇場で見る価値のある演技の一つだ。
読んで見たくなったら——『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』はdアニメストアで視聴できる(31日間無料)。
この作品が刺さる人・合わない人
刺さる人
- 「何も起きない」ように見える日常描写をじっくり味わえる人
- 2016年版を見て、もっとこの世界に浸かっていたいと思った人
- 声優の演技の細部に敏感な人(細谷佳正・潘めぐみの仕事が見どころ)
- 戦争を「出来事」ではなく「生活の変容」として描いた作品に惹かれる人
- 原作漫画を読んでいて、カットされた部分が気になっていた人
合わない人
- 明快なドラマ展開やカタルシスを求める人(この映画はそういう設計ではない)
- 2016年版を未見で、まず「完全版」から入ろうとしている人(前作から見る方がいい)
- 約2時間49分という尺に対してテンポの遅さを許容できない人
- 戦争描写全般が苦手な人(直接的ではないが、避けられない場面がある)
次に見るなら
火垂るの墓(1988年)と並べて語られることが多いが、まったく別の映画だ。あちらが喪失と怒りなら、こちらは諦念と愛着。両方見ると「戦時下の日常」の解像度が上がる。片方しか見ていない人には、もう片方を強く勧める。
聲の形(2016年)は、日常の中の傷と向き合い方という点でテーマが近い。こちらも特定の感情を押しつけてこない作り方をしていて、見た後に何かが静かに残るタイプの映画だ。劇場版アニメの「音」にこだわるなら、音響面でも聞き比べる価値がある。
この世界の片隅に(2016年版)——当然だが、完全版を見た後に見返す価値がある。同じ素材でどこが変わったか、何が加わったかが見えてきて、こうの史代の原作への解釈の違いが面白い。2本セットで一つの体験として捉えると、また違う輪郭が見えてくる。
配信・視聴情報
| サービス | 配信 | 月額 | 無料期間 | 作品数 |
|---|---|---|---|---|
| ABEMAプレミアムイチオシ | × | ¥680〜(税込) | 無料あり | 1,000+ |
| Amazonプライムビデオ | ¥600(税込) | 30日間 | 1,700+ | |
| クランクイン!ビデオ穴場 | ¥990〜(税込) | 最大1ヶ月 | 7,000+ | |
| dアニメストア | ¥660(税込) | 31日間 | 7,200+ | |
| U-NEXT | ¥2,189(税込) | 31日間 | 6,000+ | |
| DMM TV | × | ¥550(税込) | 14日間 | 6,300+ |
| Netflix | ¥890〜(税込) | なし | 1,600+ | |
| Hulu | × | ¥1,026(税込) | なし | 2,900+ |
| Disney+ | × | ¥1,250〜(税込) | なし | 500+ |
よくある質問
まとめ
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は現在、dアニメストア・U-NEXT・Amazonプライムビデオ・Netflixの4サービスで視聴できます。主要な動画配信プラットフォームに幅広く対応しているため、すでに加入中のサービスからすぐに視聴を始められます。前作と合わせて観ることで、本作の追加エピソードがより深く味わえますので、ぜひこの機会にご鑑賞ください。
